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2020.03.05 (木)

「 日本も世界も知らされない、中国恐怖の実態 」

『週刊新潮』 2020年3月5日号
日本ルネッサンス 第891回

中国の習近平政権が最大の危機に直面している。中国の危機からわが国は何を学ぶのか。中国と同じ過ちを犯さないために、わが国は何をすればよいのか、安倍政権の正念場である。

歴史上、中国は日本にとって永遠の艱難である。災いを回避するには、なんとしてでも賢く対処することだ。

いま世界に広がりつつある新型コロナウイルスの流行は東西南北、どの方向からみても中国の中心部といってよい湖北省から始まった。広がりはおさまらず、3月5日に開幕予定だった第13期全国人民代表大会(全人代)の延期が2月24日、正式決定された。全人代に合わせて開幕予定だった国政助言機関の人民政治協商会議も延期された。中国政府はその後の予定については全く何の見通しも示せていない。

習主席の面子をかけて、どうしても開きたかったであろう全人代が最後の最後に延期へと追い込まれたことは、事態の深刻さと、中国全土にどれほど広く新型ウイルスが広がっているかを物語るものだ。当然、4月上旬に予定されている習氏の国賓来日にも、大幅延期などの影響が出るのは避けられないだろう。

中国はあらゆる意味で情報を操ることで国力を強化してきた国だ。自国に不利な情報は本能的に隠す国柄だと心得ていて間違いない。その意味で現在、中国当局が発表している新型コロナウイルスによる肺炎についての情報も、実態を正しく伝えていると考えてはならない。たとえば2月20日の発表では、今回の新型コロナウイルス禍が始まった湖北省の次に感染者が多い省として、広東省が名を連ねている。ここには多くの日本企業が進出しており、香港・マカオが隣接する。

以下、感染者の多い順に河南省、浙江省、湖南省が続いているが、広東省を含め各省の感染者数はいずれも1000人台、死者は各々、5、19、1、4人にとどまっているというありえない内容の発表だ。

民間資源の強制徴用

これら一連の当局の数字は事実の反映ではなく、中国政府が、「事態をこの程度でおさめたい」と考える数字にすぎず、信用に値しないだろう。

米国、その米国と情報を共有する台湾、それに加えて香港は、たとえば広東省に対し2月の早い時期に厳格な措置をとった。米国は外交官だけでなく、広東省滞在の米国市民の多くを脱出させた。台湾は早くも2日に広東省から台湾への入境を禁止し、8日には広東省を湖北省と同じ警戒レベルの「一級疫区」に指定した。

さらに、香港特別行政区政府は中国大陸との境界を一部を除き全て封鎖し、大陸からの入境者全員に2週間の隔離を義務づけた。ちなみに同措置によって、共同通信、朝日、読売の三社は全員が香港に退避した。広東省(広州、深等)に残っているのはNHKと日経のみだ。BBCやCNNなどはここには支局を設けていない。ロイターとAPは深に支局を置いているが、記者は中国専門というよりハイテク産業に特化した報道を得意とする。

広東省で実際に起きていることを見ると、いかにも中国らしい。域内感染は全く終息していないにも拘わらず、中国政府の決定に従って、2月10日、広東省政府は「復工」を実行した。つまり、人々の勤務を通常に戻したのである。これによって、人口約1.1億人の広東省で職場、通勤、食事等を通じたヒトヒト感染が再度爆発する結果となった。

同事態に対して広東省政府は11日、コロナウイルスによる新型肺炎に関する緊急立法を成立させ、即日施行した。その内容は人の移動や町の封鎖、市場活動に関する行政措置を定める権限を、省政府から県級以上の地方政府に移すというものだ。

広東省は同時に、民間資源としての不動産や物資を徴用する戦時体制下同様の強権体制を確立した。省内の移動を制限し、封鎖や管理を可能にする最も強い拘束力を有する緊急立法(広東省通告第55号)も施行した。

有り体にいえば、人の移動制限や地域の封鎖、市場活動についての行政措置や立法権限を、下位の地方政府に移し、省の責任を回避しようとするものだ。同時に、省政府が不動産や各種物資といった民間資源をフリーハンドで利用できるようにするための措置である。

広東省がこのような緊急立法を行ったのに合わせて、省内の大都市である広州市や深市も、民間資源の強制徴用を可能にする戦時下同様の通告を発表した。当局がコロナウイルスに如何に強い危機感を抱き、全ての手段を、それも必要とあらば瞬時に駆使して、何が何でも力で押さえこもうとしているかが見てとれる。

鉄格子付きのプレハブ

こうした非常事態措置をとる一方で、広東省政府は武漢に見習う形でプレハブの隔離収容施設を突貫工事で建設し始めた。武漢をモデルとしたプレハブの隔離収容施設は、報じられているだけで3か所に上る。まず、広州市白雲区にある1000床の隔離施設だ。これは調査報道に強い独立系メディアの「財新」「21財経」が報じた。

2か所目は深市第三人民病院の拡大隔離収容施設だ。

3か所目は中山市の第二人民病院にわずか10日間で新設された200床の病院だ。ちなみにここではさらに300床の建物が追加されつつある。各病室には2名が収容されるが、写真で見るかぎりこの病院は、「病院というより鉄格子付きのプレハブのコンテナ」である。

わかっているだけで右の3か所で突貫工事が行われている。このこと自体、広東省が武漢と同じく制御不能の事態に陥っている事実を証明しているのではないか。

広東省政府は同省の患者収容能力は1万272床に上り、病院のベッド数に不足はないと発表している。仮にそれが事実なら、なぜ1000床のプレハブ隔離施設や、10日間の突貫工事による病院などを作るのだろうか。答えは明らかであろう。広州をはじめとする町々を包摂する広東省全体が、武漢を含む湖北省と同じく、制御不能の事態に陥っている可能性が高いのではないか。

中国の実態は想像以上に酷いとみて間違いないだろう。そこでいまわが国がすべきことは、まず第一に、中国との人の交流を厳しくコントロールする措置により国内の感染者をふやさないことである。次に国内の感染者には全ての情報を開示して、軽症者は自宅で療養してもらい、重症患者は病院で手当てして、重症化させず、その命を救うことである。徹底した情報開示さえ行えば、危機対処能力、他者を思いやる精神を備えている日本国民なら、必ず乗り越えられるはずだ。いま日本国民が団結するときだ。

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